2-4【宅建 過去問】錯誤

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【令和2年10月-問6】

AとBとの間で令和2年7月に締結された売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、売買契約締結後、AがBに対し、錯誤による取消しができるものはどれか。

1 Aは、自己所有の自動車を100万円で売却するつもりであったが、重大な過失によりBに対し「10万円で売却する」と言ってしまい、Bが過失なく「Aは本当に10万円で売るつもりだ」と信じて購入を申し込み、AB間に売買契約が成立した場合


2 Aは、自己所有の時価100万円の壺を10万円程度であると思い込み、Bに対し「手元にお金がないので、10万円で売却したい」と言ったところ、BはAの言葉を信じ「それなら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合


3 Aは、自己所有の時価100万円の名匠の絵画を贋作だと思い込み、Bに対し「贋作であるので、10万円で売却する」と言ったところ、Bも同様に贋作だと思い込み「贋作なら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合


4 Aは、自己所有の腕時計を100万円で外国人Bに売却する際、当日の正しい為替レート(1ドル100円)を重大な過失により1ドル125円で計算して「8,000ドルで売却する」と言ってしまい、Aの錯誤について過失なく知らなかったBが「8,000ドルなら買いたい」と言って、AB間に売買契約が成立した場合

1 Aは、自己所有の自動車を100万円で売却するつもりであったが、重大な過失によりBに対し「10万円で売却する」と言ってしまい、Bが過失なく「Aは本当に10万円で売るつもりだ」と信じて購入を申し込み、AB間に売買契約が成立した場合

肢1 取消しできない

(解説)

〇ポイント―錯誤を考える際の思考方法
錯誤の問題を解く際は、以下の手順で考えると上手くいきます。

動機の錯誤か表示の錯誤か→本人に重過失があるか→相手方に悪い点はあるか

錯誤)
第95条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
 前項第2号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第1項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。

本問は、内心(100万円で売却するつもり)と異なる表示行為(10万円で売却する)と行っているので、表示行為が誤っています。よって、表示の錯誤に該当します(95条1項1号)。

Aは重大な過失により誤った表示行為をしてしまっているので、錯誤を主張できません(95条3項柱書)。

そして、Bは過失なくAが錯誤に陥っていることについて過失なく信じているので、善意・無過失です(95条3項1号)。

よって、AはBに対し取消しができません。

(別解)
表示の錯誤→動機の表示必要なし→本人重過失→相手方無過失⇒相手方Win(取消不可)

2 Aは、自己所有の時価100万円の壺を10万円程度であると思い込み、Bに対し「手元にお金がないので、10万円で売却したい」と言った(=動機の錯誤)ところ、BはAの言葉を信じ「それなら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合

肢2 取消しできない

(解説)

(錯誤)
第95条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
 前項第2号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。

本問は内心(10万円で売却したい)と、表示行為(10万円で売却したい)は一致していますので、表示の錯誤にはあたりません。

時価100万円の壺を10万円程度と思い込んでいたため、10万円で売却することに決めたという動機と、真実は時価100万円であったという点に錯誤があります。よって、動機の錯誤に該当し(95条1項2号)、動機を相手方へ表示する必要があります(95条2項)。

しかし、AはBに対し、「本件壺は時価が10万円程度なので、10万円で売りたい」という動機を表示していません。

よって、Aは取り消しができません。

(別解)
動機の錯誤→動機の表示なし→相手方Win(取消不可)

〇ポイントー動機の錯誤と表示の錯誤

錯誤は、表示の錯誤か動機の錯誤かで要件が変わってきますので注意してください。錯誤の問題を解く際は、表示の錯誤か動機の錯誤かを区別するようにしてください。

両者の区別手順は、まず表示の錯誤に該当するかを検討し、その後、動機の錯誤に該当するのかを検討します。

・内心と表示行為は一致しているか→(YES)表示の錯誤

↓(NO)

・動機は真実と一致しているか→(YES)動機の錯誤→動機の表示が必要

両者の区別することが難しい場合、表示の錯誤に該当するかを検討し、該当しなければ動機の錯誤と考えて問題を解くようにしましょう。

3 Aは、自己所有の時価100万円の名匠の絵画を贋作だと思い込み、Bに対し「贋作であるので、10万円で売却する」と言った(=動機の錯誤)ところ、Bも同様に贋作だと思い込み「贋作なら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合

肢3 取消すことができる

(解説)

(錯誤)
第95条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
 前項第2号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第1項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。

本問は、内心(10万円で売却したい)と表示行為(10万円で売却する)は一致しており、表示の錯誤にはあたりません。

Aが10万円で売ると決めた理由は、絵画が贋作であると思い込んでいたためであり、真実は名匠の作品でした。つまり内心的効果意思(10万円で売ろう)を形成するための理由(動機)に錯誤があったということになり、動機の錯誤に該当します(95条1項2号)。

そして、Aは、Bに対し「贋作であるので、10万円で売却する」と言っていることから、10万円で売る動機もBに表示しています(95条2項)。よって、錯誤取消しができます。

なお、本問では、Bも同様に贋作だと思い込み「贋作なら10万円で購入する」と言っていることからすると、相手方が同一の錯誤に陥っているといえます(95条3項2号)。  

よって、仮に、Aの錯誤が重過失によるものであったとしても(95条3項柱書)、Aは取り消すことができます。

(別解)
動機の錯誤→動機は表示している→本人の重過失不明→相手方共通錯誤⇒本人Win(取消可)

4 Aは、自己所有の腕時計を100万円で外国人Bに売却する際、当日の正しい為替レート(1ドル100円)を重大な過失により1ドル125円で計算して「8,000ドルで売却する」と言ってしまい(=動機の錯誤)、Aの錯誤について過失なく知らなかったBが「8,000ドルなら買いたい」と言って、AB間に売買契約が成立した場合

肢4 取消すことができない

(解説)

(錯誤)

第95条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
 前項第2号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第1項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。

Aは、「8000ドルで売却する」と言っています。Aは、1ドル125円であると勘違いしていますが、「8000ドルで売却」しようという内心は持っています。そして、「8000ドルで売却する」という表示行為も行っており、内心と表示行為は一致していますので、表示の錯誤にはあたりません。

Aは為替レートが1ドル125円であると考え、このレートをもとに「8000ドルで売却」しようという内心を形成しました。つまり、1ドル125円であるという部分は内心を形成するための動機であり、真実は1ドル125円であったという動機の錯誤に該当します(95条1項2号)。そうすると、「1ドル125円で換算した」という動機をBに示す必要があります(95条2項)。

また、Aは錯誤について重過失であり(95条3項柱書)、Bは善意無過失であることから(95条3項1号)、錯誤取消しはできません。

(別解)
動機の錯誤→動機の表示なし→相手方Win(取消不可)

【平成23年-問 1】

A所有の甲土地につき、AとBとの間で売買契約が締結された場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1.Bは、甲土地は将来地価が高騰すると勝手に思い込んで売買契約を締結したところ、実際には高騰しなかった場合、動機の錯誤を理由に本件売買契約を取り消すことができる。

1.Bは、甲土地は将来地価が高騰すると勝手に思い込んで売買契約を締結したところ、実際には高騰しなかった場合、動機の錯誤を理由に本件売買契約を取り消すことができる。

肢1 ×

(解説)

本問は動機の錯誤(95条1項2号)であることを問題文が明示してくれています。動機の錯誤は相手方へ動機を表示しなくてはならない(95条2項)ことから、これを行っていないBは錯誤取消しできません。

(錯誤)
第95条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
 前項第2号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。

【令和元年-問2】

AがBに甲土地を売却し、Bが所有権移転登記を備えた場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

3.Aの売却の意思表示に重要な錯誤がある場合、Aに重大な過失がなければ、Aは、Bから甲土地を買い受けたCに対して、錯誤による当該意思表示の取消しを主張して、甲土地の返還を請求することができる。

4.Aの売却の意思表示に重要な錯誤がある場合、Aに重大な過失があったとしても、AはBに対して、錯誤による当該意思表示の取消しを主張して、甲土地の返還を請求することができる。

3.Aの売却の意思表示に重要な錯誤がある場合、Aに重大な過失がなければ、Aは、Bから甲土地を買い受けたCに対して、錯誤による当該意思表示の取消しを主張して、甲土地の返還を請求することができる。

肢3 不明

(解説)

Aの意思表示に重要な錯誤がある場合(95条1項柱書)で、Aに重大な過失がない(95条3項柱書)場合、Aは売買契約を錯誤取消しできます。

もっとも、 Bから甲土地を買い受けたCが善意無過失の「第三者」に該当すれば(95条4項)、Aは錯誤取消しの効果(遡及的無効)をCに主張できず、甲土地の返還を請求することができません。

本問は、Cの主観(善意・無過失)が記載されていないので、解答を導けません。

4.Aの売却の意思表示に重要な錯誤がある場合、Aに重大な過失があったとしても、AはBに対して、錯誤による当該意思表示の取消しを主張して、甲土地の返還を請求することができる。

肢4 不明

(解説)

Aは売却の意思表示に重要な錯誤がありますので、売買契約を取消すことができそうです(95条1項柱書)。

しかし、Aに重大な過失があると取消しできません(95条3項)。

 

※本問も、Bの主観が記載されていませんので解答不能です。

Bが悪意・有過失(95条3項1号)であったり、共通錯誤に陥っていた場合(95条3項2号)には、Aは取り消すことができます。

(錯誤)

第95条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
4 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

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