1.未成年者
(1)未成年者とは
世間では、未成年という言葉をよく耳にするかと思いますが、未成年者の概念は民法が規定しています。
近年20歳から18歳へと年齢が引き下げられました。
(成年)
第4条 年齢18歳をもって、成年とする。
(2)保護の必要性
未成年者は精神的・身体的に未熟な者が多く社会経験も浅いため、一律で保護することにしています。
確かに、未成年の方でも、成熟し、社会経験が豊富な方もいるかもしれませんが、どこまでが成熟しているのか社会経験が豊富なのか、を裁判で確定し、立証するのは困難です。こそで、未成年であれば一律に保護する制度設計にしています。
(3)保護者
未成年者の保護者は一般的には親権者が該当します。
もし、親権者がいない場合には、未成年後見人を家庭裁判所が選任することになります。
(4)保護者の権限
未成年者は成年被後見人同様、権利制約の度合いが強いです。基本的には単独で自由に法律行為は行えないと考えてください。もっとも、試験の関係では、未成年者が単独で法律行為を行える場合を覚えることが重要です。
ア 同意権
未成年者は原則単独で法律行為を行うことができませんが、親権者が同意した場合には法律行為を行うことができる場合があります。一応条文を記載しておきますが、読みづらい条文なので、まとめ表を下記に載せておきます。原則と例外がありますが、試験で出題されるのは例外の部分ですので、それを覚えましょう。
(未成年者の法律行為)
第5条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3 第1項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
(未成年者の営業の許可)
第6条 一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。

イ 取消権
親権者等は、未成年者が同意なく行った法律行為を取消すことができます。
(未成年者の法律行為)
第5条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
⇒ 同意なく行った行為は一律取消すことができます。取引の相手方が「善意・無過失」であっても関係なく取り消すことができます。それほどまでに未成年者を保護する要請は高いということです。
〇ポイント―取引相手の善意・無過失
これまで学習してきた意思表示の瑕疵の規定(心裡留保、通謀虚偽表示、詐欺、錯誤)では、取引の相手方の主観(善意・無過失)を問題にしてきました。これは、本人と取引相手のどちらを保護すべきなのか、利益衡量するためです。これは、本人に一定の落ち度(悪意・重過失)が存在する場合に、本人保護を図る必要性はないという価値判断が根底にあります。
他方、制限行為能力者については、たとえ本人に落ち度(悪意・重過失)があったとしても本人を保護すべきという考えが根底にあります。もっとも、本人が相手方を陥れるために詐術を用いたような相当悪質な場合だけ、相手方の保護を優先します(21条)。
〇ポイント―取消権者は誰か
以前、取消しと無効の違いについて解説しました。その際、無効は最初から法効果が発生していない状態、取消しは法的効果は生じているが遡及的に無効にする状態、という効果の面から説明しました。
両者の違いは誰が主張できるかという面からも区別できます。
無効は最初から法的効果が生じていない、いわば「何もない状態」ですので、誰からでも主張が可能です(ただし、例外もあります)。
他方、取消は、法効果は既に生じている状態を肯定した上で、保護されるべき者がその状態を遡及的に消滅させられるという状態です。よって、誰でも取消しできるわけではなく、保護されるべき者の意思でその法律行為を取消すか否かを判断することになります。つまり、取消権を行使できる者は限定されているのです。
また、取消権は、それを適切に期待できる行使できる者に付与されるべきですので、本人だけでなく、保護者にも認められています。
(取消権者)
第120条 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
⇒制限行為能力者か権限を有する保護者が取消権者になります。
制限行為能力者自身も取消権を有するので注意してください。当該法律効果に最も利害関係を有するのは当事者である制限行為能力者自身ですので当然です。
ウ 追認権
追認権=取消し可能な法的状態を後から有効なものとして認める権利
意思表示に瑕疵(詐欺、錯誤など)ある場合や制限行為能力者の法律行為については取り消すことができます。この「取消しができる状態」というのは法的には非常に不安定な状態です
(例)
制限行為能力者のAは、Bに土地を売る契約を締結した。Bは、買い受けた土地をCに売却し、CはDに売却した。その後、AはBとの売買契約を取消し、Dに対して土地の返還請求を行った。

⇒Aが取消権を行使したことにより、B→C→Dの売買契約は全てひっくり返ります。AB間の売買契約は取り消される可能性のあるものであり、このような契約を存続させると取引の安全を害することになります。
そのため、民法に限らず、法律一般は法的に不安定な状態を非常に嫌います。そこで、できるだけ早く法律関係を確定させるため、取消権の喪失制度や、取消権の時効制度を設け、法律関係の確定に努めます。
以上のように、取消しできる状態を解消するための方策として設けられているのが追認という制度です。
追認は、「取消できる契約を有効なものとして認めます」という意思表示です。これを行うことにより、取消しできなくなり、法律関係が確定します。
そして、追認権は取消権と表裏一体の関係にあります。「取消ししませんよ」と言えるのは、取消権を有する人だけですので、追認権を持っている人=取消権者、という図式になります。
(取り消すことができる行為の追認)
第122条 取り消すことができる行為は、第120条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。
(取消権者)
第120条 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人(親権者)、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
〇ポイントー追認の要件
追認は、取消権者でなければできないということを説明しました。しかし、取消権者であれば当然に追認できるわけではなく、以下の要件を満たした際に初めて追認ができます。
取消権者が直ちに追認できるとすると、例えば、制限行為能力者が事理弁識能力を有しないまま追認してしまいかねず、これでは本人保護を実現できません。ですので、民法は追認について以下の要件を付加しています。
(追認の要件)
取消権者+取消の原因となっていた状況が消滅
取消権を有することを知った後
(追認の要件)
第124条 取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。
(例)
未成年者Aは17歳の時、親の同意なくBから甲土地を買い受けた。その後、Aが18歳に達した後、市役所の法律相談で制限行為能力制度があることを教えてもらった。そこで、Aは本件売買契約を追認した。

⇒Aは未成年者であり、「制限行為能力者」に該当しますので、取消権者に該当します(120条)。そして、すでに18歳になっていますので、「取消しの原因となっていた状況が消滅」したといえます(124条)。さらに、法律相談で制限行為能力制度があることを教えてもらったことにより、「取消権を有することを知った後」にあたります(124条)。
以上で、Aは追認権を行使する要件が整いましたので、Aの追認は有効です。
〇ポイントー法定追認
追認は、追認できる者(=追認権者)が相手方に意思表示をすることで法律関係が確定します。しかし、追認権者の意思表示なく、法律上当然に追認の効果が発生する場合を民法は規定しています。これを法定追認といいます。
(法定追認)
第125条 追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。
一 全部又は一部の履行
二 履行の請求
三 更改
四 担保の供与
五 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡
六 強制執行
⇒この条文で重要なのは、「追認をすることができる時以後」に行った行為でないと法定追認の効果が生じないという点です。法定「追認」も追認である以上、追認の要件を満たす必要があります。
法定追認の要件は以下のイメージです。

エ 代理権
未成年者は、一部の例外を除き、多くの法律行為を単独で自由に行うことはできません。そうだとしても、スマホを契約したり、賃貸契約を締結したりしなければならない場合もあります。その際、未成年者本人は行えないので、親権者が未成年者を代理して契約を締結することになります。
代理は今後学習するので、今の段階では、本人に代わって法律行為を行ってくれる人、という程度に思っていてください。
(未成年者の法律行為)
第5条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。
(財産の管理及び代表)
第824条 親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する
2.まとめ
未成年者は未成熟ゆえに親権者等が保護にあたります。未成年者は行為能力全般を制限される代わりに、親権者等が未成年者に成り代わって法律行為全般を取り扱います。いわば、未成年者=親権者等、といったイメージが成り立ちます。
もっとも、成年被後見人と違い、事理弁識能力を欠くわけではないので、親権者から同意を得た場合や営業を許可された場合にはその範囲内で法律行為を行うことができます。こういった点で、民法は未成年者の自由と保護のバランスが上手くれるように配慮しています。
今回は様々な権限を学習しましたので、ここまでで一度知識の確認をしていただくために、下記の表を再掲しておきます。



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