1.心裡留保
(1)趣旨と意義
心裡留保=本人が真意でないことを自覚しながら行う意思表示
(具体例)
Aは、売る気もないのに冗談でBに対し、「甲土地を500万で売ってやる」と言ったので、 Bは、500万ならお買得だと考え、「それじゃあ500万で買いたい」と答えた。
心裡留保は、表示行為(「甲土地を500万で売ってやる」)に対応する内心がないにもかかわらず、表示行為を行う場合です。民法の建前からすると、内心を欠く法律行為は原則無効とされるのですが、そうすると相手方の信頼を害し、ひいては取引の安全も図れません。また、相手方に期待を抱かせるような言動をわざと行った本人よりも、相手方の保護を優先すべきです。
そこで民法は、真意に基づかない表示行為を原則「有効」としました。
もっとも、相手方(B)が本人(A)の真意に気付いていたり(悪意)、気付くことができたような場合(有過失)には、相手方を保護する必要はありません。よって、相手方が悪意・有過失の場合は法律行為を無効とします。
(2)要件および効果
(心裡留保)
第93条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
ア 要件
・意思表示
・表意者がその真意ではないことを知ってしたとき→法律行為が有効となる
・相手方が悪意または有過失の場合→法律行為が無効となる
◯ポイント―通謀虚偽表示との区別
心裡留保は通謀虚偽表示と似通う点があります。それは、表示行為に対応する内心的効果意思が欠如しているという点です。両者とも内心を欠いているので、「取消し」ではなく、「無効」が問題となります。
心裡留保と通謀虚偽表示の相違点は、「通謀」の有無です。通謀虚偽表示は、本人と相手方が通謀(意思連絡)していなくてはなりません。
心裡留保も相手方が本人の真意を知っている(悪意)ような場合もありますが、これは相手方が推測しているに過ぎず、本人と通謀まではありません。
(心裡留保と通謀虚偽表示の異同)

2.第三者保護規定
心裡留保においても、第三者が出現すれば保護する必要があります。
(心裡留保)
第93条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
2 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
(第三者保護規定の例)
Aは、売る気もないのに冗談でBに対し、「この甲壺を20万で売ってやる」と言った。Bは、Aの発言はいつもの冗談であると知っていたが(悪意)「それじゃあ20万で買いたい」と答えた。
Bは、甲壺をCへ25万で売却したが、Cは、Aの真意について知らなかった(善意)
(「第三者」へ無効を主張できる場合)

BはAが冗談を言っていることを知っているので、悪意です。そうすると、Aは売買契約は無効である(93条但書)とBに主張できます。
しかし、第三者にあたるCは、Aの真意について知りません(善意)ので、Aは売買契約の無効をCに主張することはできません(93条2項)。


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