3-1-1 制限行為能力制度の基本

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1.制限行為能力制度

(1)行為能力とは

行為能力=法律行為を単独で有効に行うことができる能力

社会で生活をしていて、我々は法律行為(例えば売買契約)を当たり前のように行っていますので、「行為能力」という言葉を意識することは少ないかもしれません。

我々は、法律行為(売買契約など)を単独で(=誰の関与もなく自由に)行うことができ、それは有効とされます。このような状態を「行為能力」を有する状態と言います。

もっとも、以下のような場合はどうでしょうか。

(例)
高齢者であるAは、認知症が進行し、5分前のことも覚えておらず、実子の区別もつかない状態にあった。買い物に行けば、不要な物を大量に買い込み、買った物もどこかに置き忘れることが頻繁にあった。
ある日、Aは、宝石店で100万円する指輪をクレジットカードで購入してしまった。

Aのように認知症を患い、単独で買い物をすることにも不安があるような場合でも行為能力を有するとして、売買契約は有効であると考えてもよいのでしょうか。  

100万円の指輪を買ったこと自体を忘れ、また、駅に指輪を忘れて帰るかもしれません。

このように、本人を保護するために行為能力を「制限」した方がいい者も存在します。

(2)制限行為能力制度

では、本人を保護するため行為能力を制限した方が良いとして、全てを制限しても良いのでしょうか。以前にも話した通り、財産権は憲法上保障された個人の権利であり、どのように権利行使するか(財産を使うか)は本来個人の自由です。

そこで、民法は、本人を保護する必要性に合わせて、行為能力の制限度合いを調整する建前をとっています。これを制限行為能力制度といいます。

制限行為能力制度では、本人の行為能力を制限し、制限する代わりに保護者を置き、保護者が、本人が行う法律行為を管理したり(同意権、追認権、取消権)、本人に代わり法律行為を行ったり(代理権)することになります。

下記の図をご覧ください。保護する必要性が高いほど、行為能力を制限する度合いが強くなります。

未成年者は年齢による未成熟さゆえ、保護する要請が高くなります。

成年被後見人は事理弁識能力(自らの行為の結果を理解し、判断する能力)を常に「欠く」状態なので、保護する要請が高くなります。

他方、被保佐人は事理弁識能力が「著しく不十分」、被補助人は「不十分」なので、成年被後見人に比べると、保護の要請は下がります。

保護の要請が高いほど、制限の度合いが高まり、本人が単独で自由に行える行為は限定され、保護者が関与する度合いが高まります。

〇=あり

×=なし

△=審判により特定の法律行為に対し認められた場合のみ認められる

(3)裁判所の関与

行為能力制度は、本来単独で自由に財産処分ができる個人の自由を制限する例外的な制度ですから、制限行為能力者に該当するか否かを裁判所が慎重に判断します。そこで、未成年者以外の制限行為能力者(成年被後見人、被保佐人、被補助人)については、裁判所の審判によって判断を示します。具体的には、裁判所は、対象者が本当に事理弁識能力を欠くのか、代理権を保護者へ付与しても良いのかなどを検討し、審判します。

未成年者は年齢により一律で制限行為能力者に該当しますので、裁判所の審理判断は不要です。

〇ポイントー制限行為能力者になるのはいつ?


制限行為能力者になるのは、家庭裁判所の審判が確定した後からです(ただし未成年者は除く)。それまでは、いくら事理弁識能力を欠いていたとしても、当然に後見人にはなりませんので注意してください。


(例)
Aは精神上の障害により事理弁識能力を欠いた状態にあったが、3月1日、その状態でBから100万円を借り入れる契約を締結した。
Aの状態に気付いた実子のZは、家庭裁判所へ後見開始の審判を請求し、5月1日に後見開始の審判が確定した。

⇒令和7年3月1日は後見開始の審判が確定していないため、この時点の消費貸借契約(100万円の借入)を無効としたければ、裁判でAの意思無能力を立証しなくてはなりません。これはかなりハードルの高い作業です。

もし、Aの借入が審判確定以降(令和7年5月1日以降)であれば、Aの意思無能力を立証するまでもなく、消費貸借契約を取消すことができます。

このように、審判の確定により対象者を制限行為能者という枠に入れ、包括的に保護する制度が制限行為能力制度です。そのため、家庭裁判所の審判は重要な意味を持ちます。

2.制限行為能力者による詐術

制限行為能力制度は契約を事後的に取消すことができるので、取引の相手方へ不測の損害を被らせることになりかねません。それでも制限行為能力者を保護するというのが民法の建前です。

もっとも、詐術(嘘をつく)を用いて、自分が制限行為能力者ではないように相手方を欺いた場合にまで、本人を保護する必要はありません。このような場合は、制限行為能力を理由にして取消すことができないとされています。

(制限行為能力者の詐術)
第21条 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。

3.まとめ

以上が制限行為能力制度概略ですが、制限行為能力制度では今回の概略が最も重要です。

この単元は覚えることも多く、似通った制度が多いので苦労している受験生が多いのではないかと思われます。暗記に頼ると覚えることが多く大変なので、制度が導入された趣旨、制度設計から記憶するようにしてみてください。保護の必要性が高い=制限の度合いが強い、という視点で次章より個別の解説に入っていきます。

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